交通事故の被害者が労災保険を使う上で気をつけるべき注意点

交通事故の被害者が労災保険を使う上で気をつけるべき注意点

業務中や通勤途中の交通事故で被害者となった場合、労災保険から治療費や休業損害に加え、被害者が死亡している場合は葬式代や遺族年金なども支給されます。労災保険を使う上ではさまざまな注意点がありますが、知らずにいると面倒な手続きが必要になったり、もらえるはずのお金が受け取れなかったりすることがあります。この記事では、業務中や通勤途中において相手方のある交通事故の被害者になった場合を想定し、労災保険を使う上で知っておくべき注意点についてまとめました。

その場で示談しないようにしましょう

業務中の交通事故に限りませんが、その場で示談を求めるような相手は、たいてい何かそうしないと都合の悪いことがあります。交通事故の場合は双方に責任があることが多く、過失割合も簡単には決まりません。また、慰謝料や休業損害などの金額も簡単には計算できませんので、交通事故の直後に金額を決めるのは不可能です。そのため、その場で示談するのはもってのほかです。

相手方からその場での示談を求められたときは、断固として拒否しましょう。その場での示談を求めるような相手なら、きちんとした交渉の場に持ち込めば有利に話を進めることができるはずです。口約束でも示談として成立してしまいますし、万が一、スマートフォンなどで会話を録音されてしまうと面倒になります。メモ書きしたものにサインした程度のものでも同様です。後から覆すことは困難なので、その場での示談はやめましょう。

なお、軽微な事故であっても必ず警察を呼んで、交通事故証明書を発行できるようにしてもらってください。交通事故証明書は労災保険の申請において必須の書類ではありません。しかし、交通事故証明書がない場合はその代わりとして交通事故発生届という書類を記入し、提出する必要があります。交通事故証明書は交通事故があったことを証明する公的な書類なので、こちらを提出できる方が良いでしょう。

健康保険を使ってはいけません

業務中あるいは通勤途中の交通事故でケガをした場合、その治療で「健康保険を使うのか」「労災保険を使うのか」を迷うかもしれません。しかし、これは自由に選べるという性質のものではなく、基本的に労災保険で治療を受けることになります。なぜなら、健康保険法第55条および国民健康保険法第56条に具体的な規定があり、労災保険から給付を受けられる場合には、健康保険からは給付が受けられないとされているからです。

そのため、医療機関へ行ったときは、普段と同じように健康保険証を出して何も告げずに治療を受けてはいけません。その理由は、後で労災保険に切り替えるための煩雑な手続きが必要になるからです。また、労災保険で治療を受ける場合は自己負担がありませんので、健康保険で治療を受けるメリットはありません。

治療を受ける医療機関は、可能であれば労災指定病院を選んだ方が良いです。労災指定病院なら治療費の支払いは必要ありません。指定病院以外の病院でも労災保険の適用が受けられますが、指定病院以外の病院で治療を受けると、治療費はいったん自分で立て替える必要があります。その後、所定の手続きをすることで治療費相当額を労働基準監督署から支払ってもらう形になります。

通勤途中でも、要件を満たせば労災扱いになる

通勤中は仕事をしているわけではありませんので、通勤途中での事故は労災保険と無関係だと思っている方もいるでしょう。しかし、労災保険法第7条2項において「住居と就業の場所との間の往復」は労災保険の対象であると規定されています。ただし、通勤途中なら何でも労災保険で補償されるわけではありません。あくまで、その経路や方法が通勤に利用する合理的なものでなければいけません。

合理的な経路は複数のものが認められますし、会社が指定した経路でないといけないというわけでもありません。また、通勤の途中に寄り道をすることがありますが、その寄り道が「日常生活において必要な行為」であると厚生労働省令で定められたものである場合に限り、補償の対象となります。

ただし、通常の経路を抜けている間に起きた事故は補償の対象になりません。通常の経路から外れる前と、戻った後だけが対象になるということです。なお、日常生活において必要な行為とは、日用品の購入や選挙権の行使、病院で診察を受けることなど5つの項目が定められています。そのため、これ以外の目的で合理的な経路から外れると、その時点から補償の対象外となります。

加害者の自動車保険と労災保険の有利な方を選ぶ

自動車を所有する人は通常、自賠責保険と任意保険に加入しています。業務中あるいは通勤途中の交通事故の場合、加害者の加入している保険と労災保険のどちらに請求するかという問題があります。これは被害者が自分の意思で決めることができます。しかし、どちらを使うと有利になるのかという点については、さまざまな要素が影響してきますので一概にはいえません。ケースバイケースなのです。

一般的には被害者の過失割合が大きいケース、あるいは加害者が自賠責保険にしか加入していないようなケースでは、労災保険を優先させた方が良いです。被害者に後遺障害がある場合は、労災保険よりも自賠責保険の方が低い等級に認定されることが多いので、労災保険を使う方が有利になる傾向があります。

このあたりの判断はとても難しい傾向です。被害が大きい場合は厚生労働省が設置している労災保険相談ダイヤルや法テラス、労災保険の相談を受けている弁護士などに相談して決めるのが良いでしょう。

会社が労災の利用を渋る場合は

労災保険の利用を嫌がる会社も意外と多くあります。なぜなら、労災保険を使うと保険料が上がると考えている経営者が多いからです。(実際は上がるとは限りません)このほか労働基準監督署から「調査を受ける可能性があること」「建設業では公共工事の入札で不利になる可能性があること」などが理由として挙げられます。しかし、そもそも労働者が死傷したときは、その旨を労働基準監督署長に届け出る必要があります。この届け出を怠ることを労災隠しといいます。

必要な届け出を怠れば、会社は刑事責任を問われたり、刑法上の業務上過失致死傷罪に問われることもあります。会社が労災保険の使用について非協力的だと必要な手続きがスムーズに進まず、もらえるはずのお金ももらえなくなるかもしれません。労災保険は給付が手厚く、加害者が任意保険に加入していないような場合は力を発揮するので、労災保険を使うというのは大事です。

労災であることを会社が否定したとしても、最終的にその被害が労災であることを認定するのは労働基準監督署です。労災の申請は会社の協力がなくても労働者が自ら行うことができます。そのため、どうしても会社の協力が得られないというのであれば、自ら労働基準監督署に出向いて手続きを進めることも可能です。あなたが会社に対して労災保険の使用を求めるのは当然の権利なのですが、会社を相手に強行な手段をとると、会社に居づらくなる可能性もあるので難しい問題です。

こうした場合は社名を伏せて、前述した労災保険相談ダイヤルに相談するか、あるいは管轄の労働基準監督署に直接相談しても良いでしょう。

労災隠しは「犯罪」です

厚生労働省は、労災隠しを「犯罪」と言い切っています。それくらい労災保険を使うことは、労働者にとって当然の権利なのです。しかし、会社が労災保険を使うことに消極的なところも多い傾向なので、労災保険を使った方が良いと分かっていても、想定外の苦労をする場合があるかもしれません。そのような場合は簡単にあきらめるのではなく、しかるべき窓口に相談して、きちんと労災保険から給付を受けられるように努めましょう。

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